久寿餅について

 ~久寿餅は発酵食品~

 江戸時代から庶民の味として親しまれている久寿餅。しかし久寿餅が発酵食品だという事を知らない方も居るのではないでしょうか。

 久寿餅は元々「麩」の副産物であります。まず小麦粉から麩の原料である小麦タンパクを分離し取り出します。その残ったものが久寿餅の原料となると小麦デンプンです。そのデンプン質を1年半から2年間、発酵させて作られます。

 久寿餅として江戸庶民に食される以前は、表具用や建具の糊として重宝されていましたが、時代と共に需要が減ってゆきました。ですが先人たちの“もったいない精神”と、ふとした偶然により食べてみたら意外や意外美味しいではないかという事になり、江戸時代より長く愛されるスイーツとなりました。

 発酵食品ですので、他の発酵食品同様、腸を強くし免疫力を高めるほか、小麦粉からグルテンを取り除いているグルテンフリーである為ヘルシーでもあります。何より食の安心・安全が問われる現代に、当店の久寿餅は完全無添加ですので、お客様には安心して召上って頂ける事
と思っております。それ故に日持ちがしないのは仕方なく、出来立ての久寿餅を美味しく召し上がって頂く為に、お買い上げ頂きましたら出来るだけ早めにお召上がり下さい。(お求め頂いた日を含めて2日以内にお召上がり下さい。

  ~久寿餅の特徴である発酵臭について~

 久寿餅は発酵している為、同じ発酵食品の納豆やチーズと同じように臭いがあります。
この臭いは発酵食品の久寿餅には不可欠であり、決して劣化した為に起こる臭いではありません。

 久寿餅の原料となる小麦デンプンはお麩屋さん(当店では90年前より、茨城の結城の焼麩屋さん)で1年間発酵させたものを納入後、店の大きな樽で更に半年~1年寝かせ発酵させます。その後に種類や発酵期間の違う小麦デンプンを独自のブレンドで配合し、混合タンクに入れます。それを攪拌して12時間程置くとデンプン質が樽の底に沈殿するので、上水を排水し新しい水と入れ替えます。この作業を4、5回繰り返すと発酵したデンプンの強い酸味や発酵臭がほとんどなくなり、その原料をふかしたものが久寿餅になります。

 蜜ときな粉をかけるのは、少し臭いのある餅を美味しく食べる先人達の工夫でした。ただこの発酵臭は久寿餅の風味を作る大事な要素であり、粘弾性、食感を楽しんで頂く久寿餅の最大の特徴でもあります。
水にさらす回数を増やせば、発酵臭は無くなっていきますが、それとともに弾力も無くなり歯ごたえの無い餅になります。

 発酵食品のチーズや納豆と同じく、水にさらす前の小麦デンプンは相当な臭いがしますが、代々伝わる職人の知識と勘で、久寿餅の命ともいえる弾力を損なわない限界まで発酵臭を取り去る作業を繰り返し行っています。

現在は一年中販売致しております久寿餅ですが、冷蔵技術が発達する以前は冬季にしか製造しておりませんでした。餅は冷えすぎても固くなってしまう為、夏場は冷蔵庫の野菜室(久寿餅の保存適温は15度位)にて保存をお願いしております。

 また、冬場に暖房の効いた部屋に常温で保存したり、保存場所により餅の発酵臭が強く出る場合がございますが、少し冷やして頂くと美味しく召し上がれます。